
11日から名古屋で
COP10「生物多様性条約第10回締約国会議」が開催されている。 世界193カ国・地域が参加する18日からの本会合では、地球の自然を持続可能な形で利用するしくみに合意できるかどうかが注目されている。
昨夜のテレビ番組『NHKスペシャル』では、COP10の大きなトピックのひとつでもある
「バイオ・パイラシー」を取り上げていた。 「バイオ・パイラシー」は「生物資源の盗賊行為」と訳されている。簡単に言うと
「発展途上国の植物を使って先進国が新薬 を作るとき、その利益配分をどうするのか。先進国ばかりがもうけるのは生物資源の盗賊行為ではないのか」という問題なのだ。

たとえば、南アフリカで自生する「ベラルゴニウム・シドイデス」という花の根っこ「ウンカロアボ」は、現地ではもちろん伝統的な風邪薬であるが、近年ドイツでも商品化され風邪の特効薬として広く愛用されている。原料の「ウンカロアボ」が売れるので、現地の人々は争って乱獲する。そのため、今「ウンカロアボ」は絶滅危惧種になりつつあるそうだ。それにしても1キログラムが日本円にして80円とは安すぎはしないだろうか。現地の人々にとってはありがたい現金収入なのだが、製薬会社はそこにつけこんでいるとはいえないだろうか。
この「ウンカロアボ」だけでない。ペルーで採れる 「チャカンガ」という木の樹液は下痢止めの特効薬だ。アメリカの製薬会社は植林をして自然保護をアピールしていたが、利益の2%を先住民へというのは、少なすぎはしないだろうか。

サモア諸島で採取される 「ママラ」という木からエイズに効く成分が見つかった。アメリカのエイズ財団はサモアの「ママラ」を利用することを考えていたが、なんとスタンフォード大学の博士が同成分を人工合成でつくってしまった。アメリカのバイオ産業協会は、もはやサモア政府に利益配分する必要はないと言っている。
発展途上国で先住民の知恵として伝統的に利用されてきた植物の力は驚異的だ。そしてそれを商品化することで、世界中の人たちの病気が治ることもすばらしい。ただ、そこに至る過程で、先進国のエゴによる搾取があってはならない。先住民の知恵と伝統に対しては、正当な対価が支払われるべきだと思う。
COP10でこのテーマがどう話し合われるのか、注目していきたい。