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12月27日(月)インカの手編みセーターはなぜ温かいのか
2010/12/27(Mon) | お店日記 | page top↑
私が入っているあるML(メーリングリスト)は、政治、経済、国際関係、健康、スピリチュアルなどなど、多方面にわたって意見が戦わされている。私はもっぱら読者の立場なのだが、きょうの投稿の中にフェアトレードについての記事があって、とてもよかったので少し長いけど新聞記事の部分を引用させていただく。12月24日の毎日新聞だ。

◇変わらぬ姿で知人と再会

 南米ボリビアの先住民女性で、今年1月に生産開発相に就任したアントニア・
ロドリゲスさん(62)が11月、国際会議出席のため初来日した。女性と先住
民の地位向上のため、伝統手工芸品の公正貿易(フェアトレード)を進め、外国
から来たボランティアの若者を自宅に下宿させてきた「肝っ玉母さん」。今回、
日本人の元下宿生たちとも再会した。

 ボリビアは37の多様な民族から成る国。旧宗主国のスペイン系住民が富裕層
に多く、先住民は歴史的に虐げられてきた。06年に先住民出身で初の国家元首
となったモラレス大統領は、男女間と民族間の平等を重視し、2期目の内閣20
人のうち半数に女性を指名。ケチュア族のロドリゲスさんはその1人。国会議員
ではないが、社会運動をけん引した力量を買われての大抜てきだった。

 ロドリゲスさんは女手一つで息子3人を育て上げた。ボリビアの離婚率は高い
。先住民には文字を持たない民族もいて、識字率の低さが貧困に輪を掛けている
。そこで、夫に捨てられ教育も受けていない母親らを首都ラパス郊外の自宅に集
め、アルパカ織物などの協同生産団体を設立。スペイン語の識字教育も広めた。
89年、当時NGOのボランティアとしてロドリゲスさん宅に下宿していた大津
市の大学職員、下村泰子さん(50)は「ぬれたおむつの臭い」を覚えている。
母親らは裸電球の下、土間に広げた風呂敷に座り、乳飲み子を抱えたまま毛糸を
編んでいた。

 団体はその後20年かけ、公正貿易の販路を欧米に開拓。下村さんの翌年に下
宿した千葉市の会社員、高橋由子さん(38)は先月、東京で再会したロドリゲ
ス氏が大臣になった今も、つましい民族衣装のままだったことにほっとしたとい
う。

 高橋さんを娘と呼ぶロドリゲスさんは「ユウコ、トラバッハ(働け)」と尻を
たたき、風呂敷いっぱいのセーターやマフラーを土産に置いていった。ボリビア
の毛織物は“温かい”。高橋さんや下村さんはその理由を知っている。【朴鐘珠


毎日新聞 2010年12月24日 東京朝刊
            
先住民族出身のモラレス大統領が閣僚の半分に女性を指名したというのも驚きだが、大臣になってもなおロドリゲスさんが少しも変わらぬつましさを持っていたことは、かつて世話になった人々にとって嬉しい驚きだったにちがいない。

そう、南米インカの人たちの手による手編みのセーターはほんとうに温かいのだ。きれいに揃ったみごとな編み目なのだが、機械編みにはない温かさがある。そんなセーターを着る時、私たちは「コンドルが飛んでいく」のように、インカの人たちがたどってきた苦難の歴史に思いをめぐらすことだろう。


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