
会場を出る時、テリーと私はドイツから来たかわいらしいお嬢さんに出会いました。聞くと東京にある「ドイツ日本研究所」というところにインターンとして2週間前に来たばかりで、名前はサラ。卒論テーマに「日本のフェアトレード」を選んでいるそうです。
「じゃあ、小さな店だけどうちの店を見ていく?」とテリーが聞くと「喜んで行きます」。というわけで3人でエスペーロに行っていろいろおしゃべりしました。
きのうきょうとシンポジウムに参加して、日本の学生さんとも話ができたし、フェアトレードの問題点もいろいろわかってよかったです。東京のボスが仕事で来られないので代わりに自分を来させてくれたんです。フェアトレード先進地域のヨーロッパの中でドイツはそれほどフェアトレードが進んでいません。日本が好きで日本に留学したいけど学費が高いでしょ。ドイツは教育費がずっと無料で何年か前に有料になったけど猛反対に遭ってまた無料になりました。エスペーロ、希望ですね。いい名前ですね。ここに来れたことをみんなに自慢するわ。ありがとうございます。
2年前の民博シンポジウムで知り合ったオーストリアのクリエさんに、私たちはその後オーストリアで出会い、フェアトレードショップを案内してもらいました。それと同じように、こんどは私たちがサラを案内できて、私たちも嬉しかったです。なんか、そんな映画がありましたね。Pay it forward(ペイフォワード)。

とかく良い面だけが強調されるフェアトレードですが、フェアトレードの現場では様々な問題が起こっています。
たとえば、フェアトレードの生産者があまりにイノセントな弱者のイメージでステレオタイプに描かれすぎていないか。実際には生産者とNGOの間には確執も緊張も汚職もある。しかしそれを明らかにすることはフェアトレードの進展を損なうかもしれない。
フェアトレード商品の間で競争が起こっている。資本主義社会では仕方が無いことだが、力の強い企業型フェアトレードラベル商品にNGO型は太刀打ちできないだろう。
フェアトレードは対等でウィン・ウィンの関係と言うが、実際は買手市場だ。先進国がフェアトレードを主導している。そのため、もう先進国に売らないで国内で売った方がいいという生産者も出てきている。
豊かな北と貧しい南というロジックが崩れてきている。不景気な北の国々とレアアースなど資源で力を持ってきている南の国々との関係に変化が見られる。
日本でフェアトレードが広まらないのは、「ほんとうにこれは生産者の役に立っているのか」をちゃんと信じられないと買えないという、日本人の完璧を求める気質が関係しているのではないか。ヨーロッパでは「生産者アフリカ」と大雑把に書いてあっても人々は買っていく。
などなど、刺激的な討論がなされました。最後に民博の鈴木先生が「公正な社会を実現するというマジカルドリームを胸にいだきつつ、一方で現実もしっかりと見つめ、では自分はどう行動していくのかを自分自身に問いたい」というまとめをされました。
フェアトレードには多くの課題があることを認識しつつ、オールマイティではないけれどもベターな道を探って行きたいと感じさせられたシンポジウムでした。