
それで私もこの本を図書館で借りて読んでみました。とてもよい物語でした。
小学5年生の周二の家は酪農家。ある日とつぜんガーナからの農業研修生エリックさんがホームステイすることになる。周二は最初はとまどうが、勤勉で明るく優しいエリックさんとすぐに友達になる。ある日エリックさんの写真の中にカカオ農園で働く小さな子どもたちの写真を見つける。「たくさんの子どもたちが学校へ行かないで働いています。子どもたちが学校へ行けるようにしたい。農業の指導者になってたくさん食べ物を食べられるようにしたい」というエリックさんの言葉を聞いて、周二やお母さんは初めてガーナの現実を知る。
この物語は家族の物語でもあります。中学生のお兄ちゃんの一樹は反抗期真っ最中。なかなか心を開きませんが、エリックさんのあきらめない声掛けでしだいに心が溶けていきます。農業後継者の問題もあります。お母さんがフェアトレード・チョコレートを食べながら言います。「自分の生産したものをきちんとしたねだんで売ることができるって、よその国だけのことではないのよ。わたしたち日本の農家にとっても、ものすごくだいじなことなの」。
作者の堀米薫さんの実家はちょうどこのような酪農家でエリックさんも実在の人物のようです。
(作:堀米薫 絵:小泉るみ子 そうえん社)