fc2ブログ
11月13日(水)『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る』 Doctor in Afganistan
2013/11/14(Thu) | お店日記 | page top↑
対談集 Dr. Tetsu NAKAMURA has been working in Afganistan for 30 years as a doctor and also a director of canals construction which saves hundreds of thousands of local people from starvation. http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/eg/index2.html

エスペーロのお客様のT夫妻は物静かながらいつも示唆に富んだお話をしてくださる人生の先輩です。ときどき本を貸してくださいます。先日「これ読んでみる?」と貸してくださったこの本はまさに私が読みたいと思っていた本で、その偶然に驚きました。

今年の夏に福山市で中村哲さんのお話を聴きました。その会場で買いたかったのに私のすぐ前の人で売り切れた本でしたので、よけいに心に残っていたのです。

中村哲さんは1984年以来パキスタン西部とアフガニスタン東部を拠点に医療活動(ハンセン病患者の治療に始まってそのあとは何でも)と砂漠に水路を作る土木事業をボランティアでやっています。活動資金はペシャワール会の会費と寄附と毎年の日本での講演活動です。

私は中村哲さんを心から尊敬していて福山では控室で身近にお話する機会にも恵まれました。小柄で真っ黒に日焼けし、偉大なことをされているのに少しも偉ぶらないひとりの医師でありました。

この本は対談集ですが、聞き手の澤地久枝さんは二・二六事件やミッドウェー海戦などをルポしたノンフィクション作家であり、「九条の会」の発起人の一人でもあります。この対談では素晴らしい聴き手として中村哲さんの人となりを引き出しています。

というのも、中村哲さんは仕事のこと以外、プライベートなことはほとんど語らない方なのですが、澤地さんには心を開いて自然に家族のお話もされているように見受けられました。そしてそのことで中村さんの魅力がさらに伝わってきます。北九州若松の川筋気質を持つ祖父や労働運動に明け暮れた両親のこと、叔父の火野葦平のこと、昆虫と山が好きだった自分のこと、クリスチャンになった経緯、アフガニスタンで7年間いっしょに住んだ奥様や子どもさんのこと、そして10歳で次男さんを亡くされていること、などなど。中村さんを尊敬する人ならさらにその魅力にひかれることでしょう。

医療活動での限界を感じて砂漠を畑にするために灌漑事業に取り組んでいる中村哲さんのすごいところは、現地の人を雇用して現地の人ができる技術だけを活用していること。9.11以降最悪の治安状態となったアフガンから日本人スタッフをすべて帰国させても自分ひとりは残って現地の人たちと活動を続けていること。その事業のおかげでアフガンの数十万人の民が食べられるようになり難民となっていた人たちが故郷に帰還しているのです。

対談の中でアメリカや日本政府への批判も忘れません。アフガンの複雑な部族社会を知らないで先進国の考えを押し付けようとすることのまちがい。タリバンとアルカイダはまったくちがう人たちなのに、イスラム教徒というくくりでテロに結びつけることの愚かさ。日本政府がアメリカのテロ戦争を支持した頃から車に日の丸をつけられなくなったそうです。

この本は読まれるべき本だと思います。とくに若い人たちに読んでほしいです。たくさん感銘を受けた個所はありますが、次の場面はアフガンの本質を言い表していると思います。

澤地:水を確保できれば、アフガンは再生できますね。
中村:そうです。
澤地:確実にね。
中村:絶対にしますね。そりゃ、欲深い人も中にはいますけれども、一般の、九十九%の素朴なアフガンの庶民は、家族が仲良く、自分の故郷で暮らせること、一緒におれること、三度のご飯に事欠かないこと、これ以上の望みを持つ人は、ごく稀ですよ。(p222)

福山の講演会でも「なぜアフガンの人たちはこんな苛酷な生活の中でがんばっていけるのでしょうか」という質問に対して「持たざるものの楽天性、持たざる者の強さです」と言われていたのが印象的でした。

ところでなぜ私が控室に中村さんを訪ねたかと言いますと、箕面でも中村さんを呼びたいという声がいくつかあって、来年のスケジュールを聞きに行ったのでした。中村さんの講演会を実施するのには30万円かかります。このほとんどがアフガンの事業に使われると思うと決して高くないのですが、市民グループでやるにはちゃんとした準備が必要です。宝くじがあたるかだれかスポンサーがいないかなと思うこのごろです。でもこの本を読んでわかったことは、中村さんは「資金集め」のために毎年講演会に帰国しているけど、ほんとうは現地のことが気になって仕方がない、一日でも多く現地にいたいのだそうです。

それで、私たちに当面できることはペシャワール会の会員になってささやかでも事業を応援していくことです。ペシャワール会のHPはこちらから。http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/


 ホームに戻る