
エスペーロは土曜日は臨時にお休みをいただき、私たち夫婦はふたりで福島県いわき市を訪ねてきました。前日からの全国的な雪で、まず新幹線の東京到着が1時間遅れました。途中の横浜や東京あたりもかなり積もっていましたね。上野から1本後の「スーパーひたち」に乗り継いでいわき市へ。いわきはサンシャインシティの愛称を持つほど冬でも日照時間が長く雪の少ないところなのですが、この日は数十年ぶりの大雪でこの写真のように雪景色。
泉の駅でAさんが待っていてくれました。Aさんとは昨年の夏に出会いました。吹田市内で行われた「福島の子ども保養プロジェクト」をお手伝いに行ったときに「いわきから来た家族」ということでお話し「2月にサンシャインマラソンに行くから」と言うと「連絡してください。ぜひ会いましょう」と言ってくださったのです。
なぜわざわざいわきまで走りに行くの?とよく聞かれましたが、それはいわきが私と東北をつないでくれる街だからです。震災後3回 ほどシャプラニールのツアーで訪ね、街を歩き、人と知り合いました。今回は4回目。言ってみれば、東北を忘れないために訪ねる場所が私にとってはいわきなのです。
Aさんが吹雪の中、車を運転してくれてまず豊間の志賀さんを訪ねました。志賀さんは豊間の浜すぐ近く

に工務所を構える宮大工さんで、最初のツアーの時に浜で津波の話をしてくれました。地域のリーダーとして津波から生還した中学校のピアノの修復に奔走したり(このピアノは紅白歌合戦で紹介されたのち全国を巡回して演奏されました)、浜でキャンドルイベントを企画したりと、地元の復興になくてはならない人です。

志賀さんのところをおいとまして再び吹雪の中を「ぶらっと」へ。「ぶらっと」は国際協力NGOシャプラニールが運営する被災者交流スペースです。いわき市民も被災者ですが、原発立地地域から避難している人たちの多くがいわき市に住んでいます。孤独で閉じこもりがちな被災者の人々が気軽にぶらっと訪れる場所として「ぶらっと」はあります。「ぶらっと」のスタッフ緑さんも走る人で、私は去年訪れた時に緑さんとマラソンへのエントリーを約束したのでした。この夜は緑さんとテリーと3人で食事して翌日のマラソン健闘を誓い合いました。
ところがこの雪です。けっきょく翌日早朝まで待って「中止」が発表されました。残念。この雪では街を動き 回るのはやめた方が良さそうと判断した私たちは駅前の商業施設の中にある「いわき総合図書館」でしばし読書を楽しんだあと(広くて明るくてりっぱな図書館でした)、同じく駅前にある「ポレポレいわき」という映画館で映画を観ました。ちょうど見たいと思っていた「小さいおうち」をやっていたからです。しみじみといい映画でした。おすすめです。

映画のあとは常磐線で湯本までもどってスパリゾートハワイアンズへ。一昨年の夏のツアーで訪れたなつかしい場所です。この日は雪で常磐自動車道が不通になったため、ホテルバスで東京まで帰る予定だった泊り客が湯本まで出てJRに乗ろうとごった返していました。私たちはのんびりと温泉につかってそのあとはフラガールのショーです。素晴らしいフラやタヒチアンやマオリの踊りの数々を堪能しました。フィナーレの「虹を」はいつも感動的です。♫雨上がりの虹を追いかけた 黒い瞳に映る光を・・・ 星の見えない夜には 夢を見るのさ目をとじて♫ フラガールの多くは地元出身の女性たちですから、震災後はそれぞれに大変だっただろうと思いますが、見る人に元気を与えてくれるようなすてきな笑顔でした。
翌日、常磐自動車道はまだ復旧しなかったため、私たちの乗ったホテルバスは磐越道から東北自動車道を経由して東京まで走りました。それから新幹線に乗り換えましたので箕面の家に着いたのは夜11時でした。ほとんど予定通りに進まなかった旅でしたが、私たちはそのイレギュラーを楽しみながら3日間を過ごしました。これはこれで忘れられないいわきへの旅になりました。