
この映画の舞台はパレスチナ。と言ってもパレスチナという国があるわけではありません。ヨルダン川西岸地区とガザ地区は「自治区」という形で10m近い分離壁で分断され、完全にイスラエルに監視管理されています。仕事に行くにも親戚の人に会うにも何箇所もの検問でチェックを受けなければいけない生活です。
一方イスラエル国内にも多くのパレスチナ人が住んでいます。イスラエル人とパレスチナ人が混ざって生活しています。パレスチナ人の子どもたちはアラブ民族でありながら学校ではユダヤの言語で学ばされています。「イスラエル国内のアラブ」という言い方をされているので子どもたちは「えっ、僕たちはパレスチナ人なの?」と言うぐらいパレスチナ人としてのアイデンティティを持ちにくい状況です。
イスラエル国内に住むパレスチナ人と自治区に住むパレスチナ人も分断されていて、なかなか自由に会うことができません。そんな中、DAMというアラブ最初の(!)ヒップホップグループがパレスチナ人として音楽フェスで連帯しようというのがこの映画です。
DAMのメンバーは英語のヒップホップ音楽を聞いたときに「これだ!」と思ったそうです。ヒップホップの中に絶望の中から自由を獲得するための希望を見出したのです。ここではヒップホップは非暴力のプロテストツールです。歴史的に見てもフォークソング、ロック、ゴスペル、フォルクローレ、解放太鼓などなどがその時代のプロテストソング(政治的抵抗の歌)として歌われてきました。それらは時には言葉によるメッセージ以上に人々の心に直接的に訴える力を持っています。
元はといえばイギリスなど西欧諸国の勝手な政策でできた国がイスラエルです。もともとその土地に住んでいたパレスチナの人々は住むところを追われました。世界中に離散した人もイスラエル国内やパレスチナ自治区に住み続ける人たちも、職業や移動の自由がない、石を投げただけで投獄されるような生活を強いられています。私達に何ができるのかを考えると無力感も感じますが、まずは現実を知ることではないでしょうか。
奇しくもきょう11月29日は「パレスチナ人民連帯国際デー」です。1947年11月29日、国連はイスラエルとパレスチナの二国共存という無茶苦茶な決議をあげましたが、その後1977年に国連はこの日をパレスチナに連帯する日に決めたそうです。
エスペーロにはイスラエル国内に住むパレスチナの人々がつくる、おいしい「パレスチナオリーブオイル」や「オリーブオイルせっけん」を置いています。パレスチナの人々を応援するひとつの方法だと思います。ぜひいちどお試しください。