
今朝フェイスブックで左の講演会の情報を見つけたので、急遽午前中の予定を半分で切り上げて、京都へ行ってきました。
ヨハン・ガルトゥング氏は、日常生活から国際関係まで世界中に存在する紛争をいかにして解決するか、その方法を提唱して「平和学の父」と呼ばれている方です。世界各地で精力的に活動されていますが、すでに85歳というお年。今のうちに直接お話を聴きたい、という思いがありました。
会場の同志社大学へ行ってみるとすでに教室は満杯の人々。ガルトゥング氏は心配したのが失礼なほどお元気で、明快かつ痛烈に今の世界を語られました。戦争は直接的な暴力だが、その背後には欧米中心経済による構造的な暴力がある。そこにメスを入れない限り暴力の連鎖は断ち切れない。ただ暴力を排除していくだけの消極的平和主義ではなく、平和を創り出していくための工夫やアイデアが必要で、それを積極的平和主義と呼ぶ(どこかの首相が言っている積極的平和主義はまちがった使い方)。異なる文化を理解し(英語ではシンパシーではなくエンパシーであると)、対話し、どちらにも分がある解決法を見つける。
たとえば北方領土問題を解決するためには、領土をロシアと日本が共有して、そこから上がる経済利益を3:3:2:2に分配する。ロシア3日本3、2は運営のための費用、あとの2はアイヌに、と言う。韓国・朝鮮であれば、ひとつの国にすることは難しいが、お互いが国境だと主張するラインの内側を共有して、そこから上がる経済利益を折半する。

ガルトゥングさんの話はどこまでも具体的で実際的なのです。東アジア共同体の可能性についても言及されました。先週も中国と韓国を訪問 して要人と会ってこられたそうです。中国は共同体に対して前向きな態度を持っているが日本が関心を示さない。日本はいつでもアメリカの方を向いている。アメリカという国は常に自分が世界一の大国でありたいので、二番目であったロシア、二番目になった中国の台頭が許せない。日本と中国が仲が悪い方がアメリカには好都合で、日本はまんまとその策略にはまっている。
ところで、通訳をされていたのは奥様の西村文子さんでした。奥様というよりも同志という感じで、ガルトゥングさんの発言を補足したりしながらの素晴らしい通訳でした。その中で私が印象に残ったことがあります。オバマ大統領の広島でのスピーチに話が及んだ時、ワルシャワのゲットー跡を訪問した西ドイツのブラント首相は一言も発せずただ跪いた、とガルトゥングさんが言われ、それを文子さんが涙をこらえながら通訳されたことです。非常に冷静で淡々と通訳されていた方でしたので、驚くと同時に熱い心を持った方なのだと、ブラントのエピソードとともに感激した一場面でした。
もっともっと聴衆を引きつけるお話がたくさんあったのですが、うまくここに書けません。たぶんiwj(independent web journal)さんが録画をしていたので、そのうちyoutubeに上がると思います。ぜひ見てください。