
ザイラー夫妻はドイツ人のエルンストさんと和子さんです。国内はもとより海外での演奏も多く、世界的に有名な演奏家です。ピアノをデュオ(連弾)で弾かれます。私は話には何度も聞いていたり新聞で読んだりしていましたが、実際にかやぶき音楽堂を訪ねるのは初めてのことでした。
プログラムの一番、シューマンの『東洋の絵』の最初のフレーズを聴いたとき、私の心はすでに喜びで震えているようでした。古い茅葺きのお家に響く音がとても優しくて温かくて平和に満ちていたからです。間に挟まれる解説からおふたりの人柄も伝わってきて、私はすっかりファンになりました。
なぜ田舎のかやぶきの家でコンサートなのかというと、おふたりは田舎が好き なのです。自分たちを「タンボニスト」と呼んで、お米作りや野菜作りもします。私たちの先入観からすると、著名な演奏家というものは、とくにピアニストは指が大切ですから、重いものすら持たないのではないかと思ってしまいますが、おふたりは田植えも稲刈りも、この家を作るときの大工仕事さえも楽しんでされたとか。エルンストさんは「音楽は自然の中でこそ」と言われます。「都会のコンクリートの中だけでいいものが生まれてくるはずありません。ピアニストの命は、手や指だけじゃなくて、心なんです。その心を育んでくれるのは豊かな自然です」。

そんなこんなを教

またいつか、お二人の演奏を自然の中で聴いてみたいと思います。