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9月22日(水)修了おめでとう
2010/09/22(Wed) | お店日記 | page top↑
アダムさん 夕方エスペーロのドアを開けて入ってきたのは、ポーランドからの留学生、アダムさんだった。いつも短パンにサンダルで重い本を何冊もかかえて大学図書館に通っていたアダムさんが、ダークスーツに真紅のネクタイで見違えるようだ。

「きょう修了式でした」と修了証書を開いて見せてくれる。毎日毎日図書館に通って、ほんとうによく勉強していたので、修了証書を見て私もしみじみと嬉しかった。「おめでとう。よくがんばりましたね」。

日本文学の専攻で、日本人もなかなか手にしないような難しい文献を取り寄せたり書庫にこもったりして、3年間の研究の後、博士課程をきょう修了したのだった。奥さんとふたりの息子さんが母国ポーランドで待っている。母国では、とりあえず大学の非常勤講師から始めるそうだ。

先日観たポーランド映画「カティンの森」について、しばらく話が盛り上がった(9月6日の日記参照)。彼もこの映画の意義を高く評価していた。ポーランドという国は、ナチによるホロコーストやソ連の圧力など大国に翻弄された歴史を持つ。

そういえば以前、エスペーロというエスペラント語の店の名前を教えたとき、「私は少しエスペラント語を勉強したことがありま中秋の名月 す。エスペラント語をつくったザメンホフはポーランド人です」と教えてくれたことがあったっけ。「あたたかい感じのいいお店ですね」と言ってくれるので「今度アダムさんが来日したときもまだエスペーロがあるようにがんばるね」と返す。

「お世話になりました」とていねいに頭を下げて店を出るアダムさんを見送ると、空に中秋の名月が輝いていた。
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