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7月23日(金)山口絵理子著『裸でも生きる~25歳起業家の号泣戦記』
2010/07/23(Fri) | お店日記 | page top↑
 「マザーハウス」という、バングラデシュとネパールのバッグを売る2006年設立のベンチャー会社がある。通販の他、東京を中心に、大阪や福岡にも直営店を持ち、途上国産業をビジネスとして成功させている会社だ。「先進国でも通用するバッグを途上国で作る」というまさに体当たり的起業ストーリーが、若き社長の波乱万丈の青春時代とともに、テレビ(『情熱大陸』)や雑誌を通して多くの人の心をとらえた。

裸でも生きるその山口絵理子さんの『裸でも生きる』(1&2)を読んだ。小学校時代にいじめを受け、強くなるべく柔道を学び、高校時代には全国大会7位、偏差値40の工業高校から慶応大学入学。学生時代にインターンでアメリカの国際機関で働くうち、現場を知らないことに気づき、「世界最貧国」とネット検索してヒットしたバングラデシュで生活することを決める。バングラデシュ大学で学びながら、恵まれた自分がこの国のためにできることは何かと考え、「途上国でかわいいバッグをつくる」ことに思い至る。

著者の純粋さ、決定の早さ、時には無謀とも思える行動力、感情の起伏(よく号泣する人なのだ)などに振り回されながらも、一気に読んだ。いちばん共感を覚えたのは、現地を知らなければ本当の支援はできないという「現場主義」と、現地の人に比べてこれほど恵まれた環境にいる自分が行動しなくてどうする?という「起業の精神」だ。

バングラデシュの多くの人々は「ただただ生きるために生きていた」という。世界中には、1日1ドル以下の生活を「ただただ生きるために生きている」人たちがどれほど多くいることだろう。ここには「何のために生きるか」を悩む先進国の人間との大きな違いがある。

エスペーロのお客様にフェアトレードの説明をすると「あ、テレビで見たあのバッグの人のことですね」などと知っている人も多く、山口絵理子さんはフェアトレードの精神を伝えるのに大きく貢献していることがわかる。ところが山口さん自身は自分がやっていることを「フェアトレード」とは呼ばない。「フェアトレード」の中に「チャリティー(慈善)」のにおいを感じて、自分はそうではない、ふつうのビジネスだということを強調したいようだ。しかし、正確に言うと、フェアトレードはチャリティーではない。生産者と消費者は対等のパートナーシップであることが求められる。

いずれにしろ、『裸でも生きる』(講談社)は、パワフルでインパクトのある起業ストーリーなので、興味のある人は読んでみてほしい。
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