
ほとんどの人が「貿易ゲーム」が何なのかを知りません。「みのおフェアトレードの会楓(ふう)」代表の三浦さんがゲームのやり方を説明してくれます。「とにかくたくさんお金をかせいでください」という説明に「やったあ、ほんとのお金?」と張り切る小学生の男の子。
メンバーはAからGまで7カ国にくじびきで分けられます。メンバーには知らされていませんがAとBが先進国、CとDが新興国、EとFとGは途上国です。封筒に入っている材料と道具とお金を使ってそれぞれ指定されたものを作ります。先進国は車を1台作れば1万ドル稼げますが途上国はバナナをひとつ作っても100ドルしかもらえません。

作るための道具であるはさみはなんと先進国にしか与えられていませんから、新興国と途上国は道具を借りるための交渉をしなけ ればなりません。みんな必死でなんとか道具を借りようと時間貸しをお願いしたりしていました。しかたなく労働力を売ろうとするチームもありましたが、悲しいことに先進国から「いらない」と言われてしまいます。

できた商品は市場に持って行って買ってもらいます。市場には検査官が二人いて商 品をチェックしますので、寸法が違っていたりすると買ってもらえません。あとでわかることですが、この二人のうちひとりは厳しくひとりは比較的甘い。だけど途上国のテーブルは市場から最も離れた後ろの方ですから、そういう情報も伝わってこないという現実があります。

私はチームには入らずに会場を回って全体の様子を見ていましたから、いろいろな場面が見られて面白かったです。途上国の小学 生が新興国の小学生に「100ドルで鉛筆を貸してください」と来るのですが新興国にも鉛筆は必要ですから断ります。断ったこの男の子「なんかだんだん心が悪くなる気がする」とちょっと気がとがめている様子がかわいらしい。1分だけという約束ではさみを貸出した子はそのまま時間チェックを忘れてしまう人のよさ。「もうほどほどにお金があるからこれでいい」とのんびりくつろぐ新興国チーム。お金が稼げなくて大泣きした男の子は、最初に「やったあ」と稼ぐ気満々だった途上国の子だったようです。
こんな悲喜交々の末に結果として出たもうけが表のとおりです。元々裕福だった国がたくさんお金をもうけていることがわかります。Cは「ほどほどでいい」とのんびりしていた新興国、DはTシャツに絵を描くほど楽しく余裕を持って仕事をしていた割にはよく稼いでいましたね。途上国は一生懸命やってもやってもやはりこの金額でした。

後片付けをしてスタッフでお茶を飲みながら話した中で「あの大泣きした男の子がいちばんこのゲームの本質を表していたかもしれないね」というのが私たちの感想でした。